『ケイヤクシマイ』感想・解説|契約で結ばれた疑似姉妹の百合を描く【百合漫画100選】

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『ケイヤクシマイ』ヒジキ
ヒジキ『ケイヤクシマイ』(KADOKAWA,2022-) 書影はAmazonより

年間100冊以上の百合漫画を読む筆者が、絶対読んでほしい!と思う作品を紹介する「百合漫画100選」。

今回取り上げるのは、ヒジキによるラブコメ百合漫画『ケイヤクシマイ』だ。

社会人の香沙音は、気になっていたファミレス店員のめぐると姉妹契約を結び、共同生活を送ることになる。義理の姉となった香沙音は小悪魔なめぐるの誘惑に勝てるのか、姉から恋人になれるのか、姉妹契約の意味とは――。

『ケイヤクシマイ』は、両親の再婚によって生まれる義理の姉妹や『マリア様が見てる』のような制度的な姉妹ではない、新たな姉妹関係を描いている。

シリアスなテーマを扱いながら、コミカルな要素もある一方、ふたりの気持ちが徐々に変化していく姿を精緻なセリフ選び多彩な表情の描写で見せる繊細な作品でもある本作の魅力を解説していく。

著:ヒジキ
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執筆者

えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合音声作品専門メディア「ゆりりかるボイス部」も運営中。

X (旧Twitter) 詳しいプロフィール

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えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合音声作品専門メディア「ゆりりかるボイス部」も運営中。

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ヒジキによる疑似姉妹ラブコメ百合漫画『ケイヤクシマイ』

『ケイヤクシマイ』はKADOKAWAのコミック誌「月刊コミックキューン」2022年5月号から連載している作品だ(既刊4巻)。

1巻発売時には声優のM・A・O、加隈亜衣がキャラクターの声を担当したボイスコミックが公開された。

作者のヒジキはWEBコミックガンマぷらす(竹書房)で『夢でフラれてはじまる百合』も連載中だ。

「姉妹契約書」からはじまる同居生活

社会人の早藤香沙音は、推しアイドルの卒業や好きな百合漫画の打ち切りで生きがいを失っていた。

そんななか、たまたま入ったファミレスで店員の青山めぐると出会う。あまりのかわいさにすっかりめぐるのファンになり、気づけば連日通い詰めることに。

『ケイヤクシマイ』1巻書影
『ケイヤクシマイ』1巻書影

ある日、香沙音はファミレスの近くで濡れていためぐるに傘を差し出す。すると、めぐるから「私のお姉ちゃんになってくれませんか?」と言われる。

さらに手渡されたのは、めぐるが自作した「姉妹契約書」。こうしてふたりは“契約姉妹”となり、共同生活をすることになった。

なぜ香沙音が選ばれたのか?姉妹契約の裏に隠された理由とは?推しとのドキドキな毎日に翻弄されながら、香沙音とめぐるの関係は少しずつ変化していく――。

この先から『ケイヤクシマイ』の魅力を既刊4巻まで、ネタバレありで紹介します。未読の方はご注意ください。

小悪魔な”妹”にときめき、惑わされる”お姉ちゃん”がかわいい

姉妹契約の後、香沙音はめぐるに言われるがまま同居することになる。ファミレスで接客されるときですら緊張していたのに、家に帰れば毎日めぐるがいる生活は香沙音にとって刺激的だった。

契約期間は30日。その期間内にめぐると仲良くなって「お姉ちゃん」として信用される立場になると心に決める。

『ケイヤクシマイ』2巻書影
『ケイヤクシマイ』2巻書影

めぐるはさまざまな言動で香沙音の心をかき乱してくる。自分が嫌いなブロッコリーを「あ~ん」して押しつけてきたり、お風呂に入ろうとする香沙音に「いっしょに入る?」と冗談を言ってみたり。小悪魔・めぐるの振る舞いに香沙音は翻弄されっぱなしだ。

香沙音は葛藤を抱えながら、ときには元カノ・美明からアドバイスをもらうことも。そうしてめぐるの魅力に揺さぶられつつも、共同生活をなんとか乗り切っていく。

日々、香沙音が見せるドキドキしたときの表情や、めちゃデカなリアクションには恋する女の子のかわいさが詰まっているし、香沙音はめぐるのことが大好きなんだなと伝わってきて、あたたかい気持ちになる。

えむ

すぐに照れちゃう香沙音がめっちゃかわいい!

「姉妹契約」が生むのは依存か愛か

めぐるが姉妹契約の相手になぜ香沙音を選んだのかは早い段階で明かされる。めぐるの本当の姉・弘美とどことなく似ているのがその理由だ。

子どもに無関心な両親の影響で、めぐるは甘え方を知らずに育った。めぐるが10歳のとき、母が亡くなり、離れて暮らしていた姉と一緒に暮らすことになる。しばらく経ってもふたりの関係性は姉妹というよりも赤の他人にしか見えない。その状況に困った姉が持ち出したのが、姉妹契約書だった。

契約書にはめぐるがしてほしいことを書き、姉はそれを守る。好きに甘えてごらんと言われてもできないけれど、契約にしてしまえば、ルール上の行為として甘えられる。この経験を通じて、めぐるは少しずつ甘え方を学んでいく。

『ケイヤクシマイ』3巻書影
『ケイヤクシマイ』3巻書影

めぐるが成長してからも契約書どおりに一緒に寝ていたふたり。姉の寝顔を見ていためぐるは、姉と唇を重ねてしまう。しかしその後、姉は突如として姿を消し、めぐるはよりどころを失う。

そして姉に会うための資金を稼ぐために始めたファミレスのバイトで香沙音と出会い、姉妹契約を結んだ。めぐるにとって、香沙音は姉の代わりに過ぎなかったのか!?

しかし、それだけではない「何か」がふたりの間で徐々に育まれていく。無表情に見えるめぐるだが、香沙音と過ごす日々のなかで、少しずつ表情が現れ、気持ちも表現できるようになっている。そのわずかな変化が繊細に描写されているのも本作も見どころのひとつだ。

『ケイヤクシマイ』4巻書影
『ケイヤクシマイ』4巻書影

義姉妹ものの新たな形、姉妹百合好きは今すぐ読んで!

『ケイヤクシマイ』は新しい義姉妹の関係性を描いたラブコメ百合漫画だ。

姉妹契約書によって生まれた香沙音とめぐるのふたり。4巻では香沙音がめぐるに対して恋愛感情を持っていると伝えたことから、物語はまた新たな展開を迎えそうだ。

香沙音は恋人になりたい自分と「お姉ちゃん」として求められる自分との間で葛藤が生まれている。一方で、めぐるのなかで芽生えつつある「お姉ちゃん」ではない「香沙音ちゃん」という存在が、これからどのように変化していくのか。今後の展開に期待が高まる。

『ケイヤクシマイ』は姉妹百合の新たな魅力を味わいたい方に、ぜひおすすめしたい1冊だ。

著:ヒジキ
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ヒジキ『ケイヤクシマイ』(KADOKAWA,2022-)

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